ついに来た
私がポン太さんに近づきすぎないように気をつけながら彼とは逆側のソファの端っこに座ると、ニヤニヤしながら話を始めるポン太さん。
「え、どう思う?俺らのこと?」
ポン太さんとはもう7回もデートしているのに、一度もこういう話になったことはなく、付き合いたいと思っていたにも関わらず自分から告白する意志は皆無だった為頑なに白を切る私。
「え、どうって?」
「俺らもう若くないじゃん?だから時間を無駄にできないっていうか、うまくいかないんだったら最初っから付き合わない方がいいのかなとも思うんだよね…。」
ん?
時間を無駄にできないのは大きく同意だけど、それはなにかい?付き合わない方がいいと思うってことかい?っていうか付き合うことを考えてはいるってことなの?
「いや、付き合うってなったら将来的なものがその先にないんだったら、多分ダメじゃない?って思うし…」
つまりなにかい?結婚を見据えないなら付き合わない方がいいって?
そりゃ私は結婚前提じゃないと次の彼氏を作るつもりはないし、むしろ結婚相手を探す名目で”婚活”してるからそりゃもちろん。
もごもごとはっきりしないやり取りが20分ほど続き、これこそ時間の無駄だし、彼は今日決着をつけないつもりかもしれないと元々足つぼ事件で調子を崩していた私はついうっかり
”私はポン太くんのこと気になってるし、付き合いたいなって思ってる”
と自ら吐露。
あんなにプライドを捨てなかった自分が20分で清水の舞台から飛び降りました。
すると特に驚いたでもないリアクションのポン太さんは
「うん。俺ももちろん好きだし付き合いたいと思ってるんだけど・・・」
どうやら彼は私と付き合ったら絶対結婚しないといけないとプレッシャーを感じているのか、
「俺、結婚する準備できてるかなぁ・・・」
そして続けて信じられない発言をします。
「俺結婚する前にもっと遊びたいと思ってたんだけど、大丈夫かなぁ」
・・・・・・・・・は?
ここへ来て”俺もっと遊びたい”発言。
絵に描いたようにどう反応していいか困っている反応だったであろう私。
おそらく彼は結婚を意識している私を意識しすぎて彼の本心を包み隠さず話してくれているのだとは思いますが、こう言われてしまったらこちとらどうしていいか分からないし、第一引いてしまう。
返す言葉がないとはまさにこのことで、やっと私が絞り出した言葉は
「え・・遊びたいの?・・・じゃあ遊べば・・いいんじゃない?」
すると彼は
「いや、違う。遊びたいわけじゃない。違う違う!」
失言を撤回しようと、言葉を選びながら話し出したその内容は
彼は男の割に子供を作るなら「俺も時間がない」と思っている人で、自分の人生の残り時間も気にしていると説明。
子供ができたら“自分のターンは終わりで、自分の為ではなく子供の為に生きていくから好きなことができなくなる。だからこそ、今日までの人生で自分は好きなことをやり尽くしてきたのか不安になった”という意味だった、とのこと。
特に女の子をはべらかして遊びまくりたいといったチャラ男発言ではないと強めに訂正するポン太。
ほんまかいな。
うーん。本心でそういう意味だったか、ただ焦って言い訳しただけなのかこの時点では定かではありませんでしたが、とりあえず彼は将来的に子供が欲しくて、子供ができたらさらにしっかりしないと、と思っていることは確認ができた(とプラスに考える)。
そして彼が今まで自由に好きなことをやりたいだけやってきたかは私には分からないことなので、私がどうこう言えることではなく、彼が決めるということと、
私も子供を産みたいとか考えると、付き合う前から細かいことを気にしてこの人でいいのかなとかじっくり熟考している時間はないから、付き合ってみてお互いこの人じゃないなと思ったらすぐ別れた方がいいけど、それもこれも付き合ってみないことには分かんない、と私は思う。
と冷静に伝えてみると、
「そうだよね。そうだよね。うん、じゃあ付き合おう!」
と爽やかな笑顔で握手を求めてきたポン太。
その瞬間キツネにつままれたような、してやられた気分にどっと浸りましたが、ここでうーんうーん悩んでいても多分何も始まらないし、やっぱり人は見た目じゃないし!(そこかい)
やけになった私はポン太さんの手を取ることを決め、とりあえず交渉成立。
握手を交わしました。
握手から始まる交際は生まれて初めてです。
握手した直後は本当にこれで良かったのか・・私は騙されていないんだろうか・・・と心臓バクバク。
そんな不安に苛まれていた私に国境の封鎖が解けたかのように急に接近してきたポン太くん。
ここで初めてハグをされ、どうやら晴れてカップルになった私たち。
この日の夜は興奮と不安でなかなか眠れませんでした。
つづく。