驚愕の夜
語り始めた元彼。
その内容は驚くべきもので、
- 去年の夏に別れた後、再び私を振り向かせようと急いで仕事を見つけ、前から興味があったコンピューター関係のオンラインコースを取って自分に自信をつけた。
- 最初っから元サヤに戻る気満々で、私に新しい彼氏がいようが関係ないと思っていた。
- 二人で心機一転新居に住もうと知り合いから新築アパートを借りる準備をしていた。
- 5年間の二人の思い出をまとめた4時間超えのビデオを作っていた。
- そのビデオを引っさげて私の誕生日にプロポーズしようとしていた。
などなど。
ビックリを通り越して正直呆れてしまいました。
別れた時は何日も話し合ってお互いこれ以上の関係修復は見込めないと判断した上で正式に別れました。
5年一緒にいたうちの最後の2年はお互いハッピーではなかったものの、私も彼のことをなかなか諦めきれず”きっとうまくいくはず”と目の前の課題から目をそらして別れる決断を先延ばしにしていた私たち。
”このままじゃダメだ。子供を持つという夢を半ば諦めて結婚もしてくれないこの人とダラダラ一緒にいたらいけない”
と心を鬼にして苦渋の決断で別れた私。
その後は自分の気持ちを整理・客観的に見つめるためにブログを開始し、死に物狂いで新しいパートナー探しに明け暮れた日々。
マッチングアプリを始めた時は何度も心が折れそうになり元彼のことが頭に浮かんで”彼に戻れたら楽だよなぁ・・”と思うこともしばしばありました。
それでも”楽な方に逃げたらダメだ”と自分を制してなんとかポン太くんにたどり着きました。
それなのに彼はその8ヶ月の間に彼の気持ちを一度も私に伝えることなく、また私たちの関係が復活すると勝手に信じて突き進んでいました。
私に新しい彼がいようがいまいが二人で築いた5年間はそう簡単に崩れるものではない、彼氏がいたとしてもきっとうまくいかずに別れて自分のところに戻ってくる、という出所不明の自信が彼を支えていたようでした。
私の誕生日にプロポーズをしてうまくいった暁には事前に用意しておいた新築のコンドミニアムで新生活を開始し、今までの暗い過去は捨てて明るい未来だけを見つめていくつもりだったそうです。
この驚くべき事実を彼が語り出す前に
私はこれから結婚して、お腹にはもう赤ちゃんがいます
ということを伝えていました。
彼氏がいる程度だったら怯みもしないけど、さすがに結婚・妊娠と来たらそれはもう無理だ、と感じたみたいで何時間も涙を流しながらダウンタウンの夜景が一望できる海沿いのベンチで辺りが真っ暗になるまで彼は話をやめませんでした。
「今さらそんなこと言われても・・」
としか思いようがなかった私は、最初は勘弁してくれよ〜と怒りの気持ちすら込み上げてきていましたが、
- 彼をかわいそうだと思う気持ちと
- なんで自分の気持ちをもっと早く言ってくれなかったんだという彼を責める気持ち
- 私だって別れたくなかったのに・・という昔を振り返って悲しくなる気持ち
が入り混じってこちらも涙が止まりませんでした。
別れた直後で彼の気持ちを私に正直に話してくれていたら戻っていたかもしれない、と思うととても複雑な気持ちにはなったものの、冷静に考えても彼に戻りたいという気持ちは一切ありませんでした。
ポン太くんと一緒にいられて今本当に幸せだし、赤ちゃんを授かったことも奇跡としか言いようがない。
「もう私にはどうしてあげることもできないよ。ごめんね。」
この場を離れたくなさそうな彼を促すように席を立ち、私たちは真っ暗なビーチを後にしました。
つづく。